コーヒーはヨーロピアン・ローストが好みだった
高校時代,僕の斜め後ろの席に彼は座っていました。
黒ぶちの眼鏡をかけて,一見,外国小説なんかを無言で読みこなすようなタイプの彼は,バンドでは,ギターとして,デュラン・デュランやJAPANを演っていました。僕は当時からずっとハード・ロック系で,すれ違いが多かったけど,ずっと,彼のことはニュー・ヨーロピアン系な人と思っていましたが,高校時代に渋谷へ出たとき,楽器屋さんのキーボードコーナーで,いきなり流暢なピアノを弾いていたのを見て驚きました。
「こんな曲も弾けるの?すごいね。」
「いや,まだまだダメだよ。俺は。姉貴のピアノでちょこっとマネしてるだけだから・・・」
普段,寡黙な彼は酔うと,「俺はダメだ」を連発するような謙虚な男でした。
そうそう,仲間うちで東京に繰り出したときに,上りの出口で往復切符の下りを改札で渡してしまい,帰るときにとても困ったよね。みんなで駅員さんを説得して,なんとか家まで帰ってこれたね。
当時は自動改札でなかったし,新幹線も大宮暫定始発でさ,でも楽しかったよ。
それから彼は難関国立大にストレートで受かり,ずっと離れたところで暮らしていました。
先々月から,僕はふいにベースが弾きたくなったり,買いたくなったり(実際買ってきた),ジャズがとても聴いてみたくなったり,なんとなく音楽に浸かりたいという衝動にかられました。そして,いままでコピーしたことのない曲でも,なぜか音を簡単にとれることがありました。
先日,仲間から連絡がありました。
僕が新しいベースを買いに行っていた日,彼は空の世界へ行ったそうです。
今頃は,あちらで巨匠たちと一緒にセッションしているでしょうか。
僕もまだまだですよ。
練習しないとね。
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